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教授紹介

1994年慶應義塾大学総合政策学部卒 
2001年米国コーネル大学大学院産業労働関係研究科Ph.D. 
2000年より,筑波大学理工学群社会工学類で専任講師,准教授 
2008年より慶應義塾大学商学部准教授,2010年より,同教授。
2008年アメリカ経営学会優秀論文賞受賞。 
2011年 国際経営学会最優秀論文賞ノミニー。

2012年 アジア経営学会組織・経営理論部門 最優秀論文賞。

2013年 Management Research Review誌
     Highly Commented論文賞


Academy of Management Journal,Strategic Management Journal, Organization Science等の国際一流研究誌に論文多数。専門は,経営学,マクロ組織行動論,マクロ組織論。

理論とは?

 

慶應義塾大学 商学部 教授

三橋 平

理論とは

 理論とは,因果関係の体系的な集合,を意味します。社会科学分野の多くは,因果関係を解明すること,何をすると,何が起こるのか,なぜ何かが起こるのか,を目的にしています。

 

 経営学で言えば,なぜある企業は,他の企業よりもイノベーティブなのか,となり,このイノベーションの高さ,低さが従属変数となります。そして,この高さ,低さを説明するものを独立変数といいます。

 

 ある研究者は,企業が他社と構築しているネットワークに着目したり(ネットワーク理論),別の研究者は,企業トップがどのような技術領域にコミットメントしているのかに注目したり(傾注ベース論),さらに別の研究者は,その企業が持つ技術的ノウハウの歴史的資産の大きさに注目したりしています(吸収能力論)。そして,例えば,ネットワーク理論のアプローチでは,「企業が他社と構築しているネットワークがオープンであればあるほど,イノベーティブになる」,「より多くの他社とネットワークを構築していると,イノベーティブになる」,「より多くの他社とネットワークを構築している他社と提携すると,イノベーティブになる」,という因果関係が出てくるのです。そして,このような因果関係が体系的にまとまったものが理論になります。

ディスシップリンと領域学

因果関係を明らかに

 因果関係が分かると何がよいのでしょうか?

 

 まず第1に,新たな因果関係が明らかになることで,知の最前線を更に前進させることができます。

 動物と人間を分けるものの1つが,知の世界があるか,ないか,と言われています。もしこの考えが正しければ,知の最前線を進めさせる行為は,最も人間らしい営みの1つを行う,そして,人間として使命を果たせると言えます(やや大げさですが)。

 

 第2に,因果関係が分かれば,ある問題に直面した時に,どのように対処,対応すればよいのか,という知見を提示することができます。

 例えば,企業がイノベーティブでないことに困っていれば,どのようにネットワークを組めばよいのか,という示唆を理論から提示することができます。この時重要なのが,その理論が正しくなければいけません。正しい理論とは,正しい方法で論証され,実証され,本当にその因果関係が成立すると言えなければ,役に立つ知識になりません(つまり,虚学の逆です)。

 

 第3に,ゼミナールにいるほとんどのメンバーは,プロの研究者になる訳ではありません。

 しかし,このような理論と実証から成り立つ研究の世界を知ることで,物事を俯瞰的に理解し,例えば,company-wideな視点から部分最適でなく全体最適を常に考えられる能力が鍛えられると考えています。メタ認知という言葉がありますが,これは,自分がどのような状況に置かれているのかを広い地図の上の中で理解する行為と言えます。

 例えば,小学生のサッカーは,ボールに全員が群がってボールとともに全員が移動するようなアリンコ・サッカーが少なくありません。プロのサッカーでは,司令塔と呼ばれる人材が,全体を見渡し,相手との位置関係,相手の戦略,自軍の強みなどを総合的に判断しながらゲームを支配していきます。

 実社会においては,このような力は現実を抽象化し整理することで可能になると考えています。このような力は,研究者にならずとも,必要なのではないでしょうか。

学術的な経営学

 経営学の裾野は非常に広いため,例えば,日経ビジネス記事のようなものを書くのが経営学の論文と勘違いされるケースが少なくありません。このようなものは,ナンチャッテ経営学というジャンルのモノになってしまい,論証の正確性,実証の正確性,理論的貢献がないものとなります。

 

 もちろん,組織のことや経営に関するヒントを得たり,現実の問題との整合性を考えたりする上では,貴重なネタになるため,ゼミナールでも読んだり,議論を行う対象としています。しかし,私共が研究と考えているものは,査読されたジャーナルにのっている論文を意味し,本屋さんの棚にあるものではありません。

 

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